Editor's note 2010/11

幼稚舎元教員 岩田 健 作

 ホームページ「楽友」の編集で一番残念なことは、高校の現役と連絡がとれないことだった。卒業以来55年、何も先輩らしいことをしてこなかった報いかもしれない。

だが、それにはわけがある。弁解がましく聞こえるかもしれないが、楽友会は発足以来、少なくとも4期生の私にとっては、高校と大学が一体となって活動する共同体であった。だからつい最近まで高校と大学の現役同士はもちろん、三田会ともいつも連絡をとりあっている、と思いこんでいた。ところが案に相違し、今の高校楽友会はいわば孤児のような存在で、大学楽友会や楽友三田会から離れて何の連携もない。しかもその状態が30年以上も続いて代表者も分からないというのだから呆然とした。それで連絡がとれなかったのだ。
 

孤立の背景には60年に始まる安保闘争と、70年代に入って塾(大学)にも波及した全共闘運動や学園ストなど、学生運動の激化があったと思われる。真偽の程は分からぬが、塾監局は過激化した紛争が高校に飛び火するのを懸念し、特に文科系クラブの高校・大学の連携活動に水をさした。そしてそのあおりを受け、楽友会もその一枚岩の基盤に亀裂を生じた、といわれている。

それが事実とすれば真に残念なことではあったが、取り返しのつかないことではないだろう。要は、楽友会に関わる全員が塾生としてまた塾員として、このことをどう考えるかが、今、問われているのだ。

 その観点に立つと、今年6月に「創部100年記念コンサート」を開催したマンドリン・クラブ(以下略称マンクラ)の光景が、羨望の念と共に浮かびあがる。そこでは中等部、塾高・女子高・志木高、大学の現役およびそのOBGで構成する三田会その他の全組織が相集い、すばらしい一大祭典を繰り広げていた。それこそ慶應義塾ならではの「社中一致」、「気品の源泉」、「半学半教」の精神が見事に花開いた理想の情景であったといえよう。

マンクラといえども同じ塾内の一団体として、学生運動と無縁だったわけではない。いや、それよりももっと深刻な太平洋戦争の戦禍を経験し、部の存続すら危ぶまれた時期があったと聞く。だがそれ等幾多の試練を乗りこえ、今日もなお逞しく成長発展を続け、塾内はもとより外部においてもアマチュア音楽団体の範としてすぐれた活動を展開しておられる。

 楽友会もこうした先達を大いに見習うべきだろう。マンクラに限らない。野球部をはじめとする体育会系諸クラブはもとより、文科系でも他にワグネル、演劇、キリスト教・仏教青年会、英語会等々、高校と大学の提携活動を活発に展開しているクラブは数多い。塾にあっては、提携していない方がむしろ不自然なのだ。

ではなぜ楽友会は断絶したままなのか。積極的な理由は全く思いあたらない。学生運動は70年代初頭に急速に後退し、以後大学と高校の提携活動を阻む障害は何もない。日本の合唱活動が衰退したわけでもない。となれば、皆が迂闊だったか、総体としての楽友会が長期的ヴィジョンを欠いていたか、そのどちらかである。このままでよいわけがない。

それが「オール楽友会ファミリー・コンサート(略称AGFC)」の開催を提案した一つの根拠である。幸いにもその趣旨は皆が諒とされ、いよいよ来年7月2日に日吉の藤原記念ホールで実現されることとなった。

 そこで早速塾高と女子高の出身者が、夫々の高校楽友会の部長先生を通じ、このコンサートへの参加を打診した。だが残念ながら今のところよい返事は届いていない。<まだ時間はあるし、たった10分程度の出番なのだから、何とかしてくれないかなー>と思ってはいるが、そう簡単にはいかないらしい。

無理からぬものがある。いきなり見ず知らずの高齢者が現れて「わたしゃ あんたたちの 先祖だよ」と名乗られても戸惑うばかりだろう。兄弟姉妹がいて、親の世代から祖父母の世代につながり、初めて自分たちの立ち位置がハッキリする。その中間部が欠落していたのだから、急に「ファミリーの一員として参加し、歌ってちょうだい」といわれても<うーん>と考えこんでしまうのが人情かもしれない。

<こりゃ「覆水盆に返らず」かな>と半ば諦めかけていたところに、強力な援軍が現れた。つまり高校楽友会創立時代のOBG世代と、現役の高校楽友会員をつなぐ中間世代がまとまって(約150名)、忽然と名乗りをあげてくれたのだ。

その経緯は「高校楽友会」のページの最新記事「第1回OB/OG懇親会」に詳しいのでここでは省くが、それによって高校現役と楽友三田会との間に、ポッカリ空いていた深い溝が一気に埋まった感がある。そこでは「楽友会という故郷」を同じくする老若男女のOBGたちが一堂に会し、あたかも旧知の仲間のように「亜星さんの『青春讃歌』」を歌った。指揮者はもちろん楽友会村・永世村長の岡田忠彦先生!

その「援軍」の中には、「社会人になってからも倦むことなく現役高校生たちとつなげ、見えないところで糸を紡いできた数々の卒業生がいる(発起人・亀井淳一君寄稿の『雑感』より)」とのことだった。何と奇特な人たちだろう。今回の懇親会を契機に、その人たちの情熱が皆に広がり、現役学生たちと近しく接することができるかもしれないという期待が募った。一日も早くその日が来ることを願っている。

 それにしても「歌」の凄さよ。あの「青春讃歌」であらゆる楽友会員が一つになれたのだ。作詞・作曲をされた会友・小林亜星さんもきっと喜んでくださるに違いない。それは今後も楽友会のあらゆる行事で歌い継がれていくだろう。
●「楽友三田会合唱団/18回定演」(11月23日・祝日/第一生命ホール/14時〜)
●「大学楽友会/59回定演」(12月10日・金/なかのZERO大ホール/19時〜)
●「楽友三田会・総会/新年会」(11年1月29日・土/芝パークホテル/13時?)
●「高校楽友会/47回定演」(11年3月19日・土/日吉・藤原記念ホール)
●「第1回オール楽友会ファミリー・コンサート」(11年7月2日・土/同上)
(オザサ/11月7日)


Hoagy Carmichael

 STARDUST夜話星の数ほどあるポップソングの中でホーギー・カーマイケルが書いたスターダストほど沢山の人がレコーディングをした曲はないといわれています。レコードの吹き込みは数知れません。

作曲したのは1927年ですが、1929年にホーギーのアイディアにもとづきミッチェル・パリッシュが詞を書き、珠玉のスタンダードとなりました。ホーギーは喜んで弾き語りをしています。ホーギーは何でもやりたがる人で、ピアノの弾き語りにとどまらず、トランペットも吹いたそうです。古い方はテレビ番組「ララミー牧場」に毎週レギュラーで出ていたのをご覧になっているかもしれません。

初めは”Star Dust”というタイトルでしたが”Stardust”に改められました。
 

先ずはホーギー・カーマイケル自身の飄々としたピアノと歌をお聴きください。

”Stardust” By Hoagy Carmicael ←(クリックして)

この歌のレコードで一番かけられた回数の多いのは、Nat 'King' Coleの歌ですが”Stardust”の定番となりました。ここではあえて聴いていただきません。

 私が面白がっているのは、1931年にルイ・アームストロングが歌った”Stardust”です。これは聴いていただかないとあとの話が続きません。

如何でしたか?誰にも真似ができない歌です。私の頭の中では、キングコールではなくサッチモが定番だったのです。
 

 それが1990年代になって実に面白いCDが作られました。1950年代の終わり頃に、Lambert, Hendricks & Rossという男声2人、女声1人のジャズコーラス・グループが登場しました。Dave LambertとJon Hendricksは長年、カウント・ベイシーのサウンドをコーラスにしたいと研究をしていたのですが、Annie Ross というイギリス人の強烈な歌手を見つけて、トリオを組みました。1959年、アメリカのダウンビート誌で”The Hottest New Group In Jazz”と驚きの記事が書かれました。モダンジャズの器楽曲に歌詞をつけて歌ってしまったのです。これをVocaleseといいます。

そのHendricksが30年も経った1990年にレコーディングしたCDがあります。Freddie Freeloaderというアルバムです。その中に”Stardust”があるのです。これも聴いてください。


Jon Hendricks(1921- )

 

 Hendricksはサッチモのトランペットのアドリブに歌詞をつけて、自分のカミサンのJudithに歌わせたのです。楽友の皆さん、こんな”Stardust”聴いたことがありますか?これを知っている人は「通」です。ミセス・ヘンドリックスの歌もものすごいのですが、サッチモのトランペットのリフに歌詞をつけたというところがたまらなく面白いわけです。

さらに、カミサンの可愛いVocaleseの後に、歌っているのは誰だと思いますか?20年前にこれを聴いたとき、サッチモかと思いました。多分、サッチモのレコードは既に版権がフリーになっていますから、サッチモの歌をそのまま持ってきてかぶせてレコーディングしたのかと思いました。

ところが、よく聴いてみるとJon Hendricksが物まねをして歌っているのです。いやー、誰も真似ができないと言った言葉を削除しなければなりません。

 ところで、自分のアルバムのタイトルを”STARDUST”にしたミュージシャンは、(1)Oscar Aleman, (2)Dave Apollon, (3)Louis Armstrong, (4)Chris Barber, (5) Charlie Barnet, (6)Big Tiny Little, (7)Bill Charlap, (8)Dave Brubeck/Paul Desmond, (9)Don Byas, (10)Jerry Byrd, (11)Ron Carter, (12)Bill Charlap, (13)Natalie Cole, (14)Kenny Colman, (15)John Coltrane, (16)Cycomotogoat, (17)T.Dorsey/F.Sinatra, (18)Mickey Finn & Big Tiny Little, (19)Stephane Grappelli, (20)Lionel Hampton, (21)Coleman Hawkins, (22)C.Hawkins/J.J.Johnson/L.Hampton, (23)Fletcher Henderson, (24)Jean-Michel, (25)Jack Jenny, (26)Terry Lightfoot, (27)Robert Mandell, (28)Glenn Miller, (29)Herb Miller Orchestra, (30)Nashville (31)Mandolin Trio, (32)Don Neely, (33)Willie Nelson, (34)Piano By Candlelight, (35)Paul Schmeling, (36)Derek Smith Trio, (37)Kay Starr, (38)Dave Stryker, (39)Harry Verbeke, (40)Ken Whiteley, (41)Edythe Wright/Tommy Dorsey・・・これだけいます。(11/7 わかG)