Editor's note 2015/8

 
8月6日で猛暑日が7日間続きました。編集部主幹はぐったり、ゲンナリで「夏休みにして〜」とメールが来ました。やむを得ず、今月はカッパからげて三度笠で一人旅です。



Newport, Rhode Island, U.S.A.

 夏の夜のジャズと煙草19世紀後半から20世紀初頭にかけて、アメリカが新興国家から世界の大国へと歩みを進めたころ、桁外れの大富豪が生れ、彼らは鉄鋼王、鉄道王、炭鉱王などと呼ばれました。

大富豪たちは避暑のための別荘地に、ニューヨークから車で3時間ほどの東海岸の瀟洒な町 Newport を選んだのです。Newport はアメリカで最も由緒ある避暑地となったのです。

ヨーロッパの皇族や貴族たちも、この地に招待されてパーティが開かれたということです。記録によると、一晩の出費が当時の金で20万ドルという400人のパーティがあったというのです。

私は「ニューポート・ジャズ・フェスティバル」を思い出します。

アメリカのゴルフトーナメントもここから生れたものですし、ヨットの「アメリカズカップ」もここで生れたものです。野球のスタジアムもここに出来たのが最初です。とにかく、アメリカ初という形容詞がつくものが多いのです。

ジャズ・フェスティバルは、"Newport Jazz Festival"がここNewportで1954年に始まり有名になりました。さらに1959年には’58年のNewport Jazz Festivalの模様を映画にした「真夏の夜のジャズ Jazz on A Summer's Day」が公開されました(日本では’60年)。サッチモをはじめ偉大なジャズメンが登場し、50年以上経った今も多くの人々に感銘を与える映画です。


Documentary Movie
(1959)

ジャズ・フェスティバルはコンサートとは違い、より多くの人達が楽しめるように屋外で開かれるものです。私が「ジャズの歴史博士」と呼ぶ鈴木英夫さんの資料によると「ジャズ・フェスティバルとは場所を決めて、定期的にかつ継続して開かれるものをいう。1946年にジャズフェスの原型がオーストラリアのメルボルンで現れ、1948年にはフランスのニースでサッチモらを招いて開かれたものが皮切りである」ということです。

このイベントは、ジャズをタバコの煙がもうもうとする薄暗い酒場から健康的な戸外へ、そして何千人、何万人もの観客の前へと連れ出してしまったのです。そして、ジャズフェスは真夏にやるというイメージが定着してしまいました。

そもそもNewport Jazz FestivalはLouis Lorillard夫妻が、ニューヨークで「Storyville」というジャズハウスを経営しているGeorge Weinに話を持ちかけ実現したものです。Lorillard家は煙草産業で財を成し、"Millionaire"という語が初めて使われた大富豪です。KENTを吸っている方はLorillard Tabacco Companyにお金を払っているのです。

LorillardにはNewportというタバコもあります。これを吸っているとジャズ通になります。嘘です。

いやぁ、ジャズは生れも育ちも卑しい音楽ですが、Newportと結びつけると何となくハイ・ソサイエティになったような気分が漂ってきました。


Julius Caeser (100-44 B.C.)
 ュリアス・シーザーとジャズと煙草1936年のスタンダードの名曲"These Foolish Things Remind Me Of You"には、

♪"You came, you saw, you conquered me."

という歌詞があります。これはジュリアス・シーザーが、紀元前47年に第六軍団を率いて遠征し、現在のトルコ、カッパドキヤの近くの「ゼラ」でオリエント軍を打ち破った時、ローマ元老院に報告として送った簡潔な言葉、「来て、見て、勝った」(VENI VIDI VICI)の英語訳である
 

"I came, I saw, I conquered"

をもじっていて洒落ています。

作詞はHolt Mervell(本名Eric Maschwitz)というイギリス人の放送関係の人間で、 ”A Nightingale Sang in Berkeley Square”の作詞もしています。

"VENI VIDI VICI" という言葉は、フィリップ・モリス社の"Marlboro"という煙草の箱を見ると、その中央、王冠と馬をあしらった同社の紋章の下部に、小さく書き込まれています。

"Marlboro Country"という言葉はタバコ産業を象徴する言葉です。フィリップ・モ−リス社のTVコマーシャルで"Welcome to Marlboro Country"というコピーが使われました。カウボーイがマルボロを吸いながら馬に乗って広大な自然の中を歩く風景です。

しかし、スエーデンでは1994年に、一人のNSG(Non Smoking Generation)が、その背景に「墓場」を使った禁煙ポスターを作り出して、タバコ産業に強烈なアタックをかけました。これは社会的反響を巻き起こし、スエーデンだけでなく各国でタバコの宣伝がしづらくなる結果となりました。

1200枚のこの広告板が街頭に掲げられたということです。これが"The Advertisement of the Month"の第一位になりました。

今月のキーワードは「煙草とジャズ」でした。最近は喫煙者の立場はじつに弱いものとなっています。昔のジャズのライブハウスは煙でもうもうだったのが、今では禁煙になった店まであります。

わたし自身は2度煙草を止めた経験があります。1回目は1976年の1月、突然の自然気胸で右肺に穴が開き、空気が抜けて片肺になりました。それで、吸えなくなって、16年間禁煙しました。その後、再度吸い出したのですが、2004年12月に入院して1週間吸えなくなって、それを機会に完全に脱煙しました。もう吸うことはありません。

⇒ These Foolish Things 譜面

(2015/8/7・かっぱ)


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