Editor's note 2018/11


Henry Nemo(1909-1999)

’Tis Autumn知り合いの京子さんが好んで歌う歌に”'Tis Autumn”がある。1941年、Henry Nemoの作詞作曲による彼のヒットソングである。同じ年に”Don't Take Your Love From Me”が書かれている。

Cotton Club時代にはデューク・エリントンやアーヴィン・ミルスと一緒に”I Let a Song Go Out of My Heart”を1938年に出している。

「'tis」という表記は「it is」の略記法であるが、tizと発音する。シェイクスピアの「ロミオとジュリエット/Act 3 Scene 1」「ヴェニスの商人」などの中でこの略記法が使われている。
 

Shakespeareによる単語は沢山あるが、

thou = you (主語・単数形)
ye = you (主語・複数形)
thee = you (目的格 "to you" )
thy = your (所有格・単数形)

'tis = it is
'twas = it was
hast = have
wast = were

こんな英単語が古い歌に使われているのに出会ったことがあると思います。スタンダード・ジャズでは、よく使われています。古い作詞家たちがシェイクスピアを勉強して真似したものです。

そうしたら、ついこの間、ジャズ好きアナウンサーが、”'Tis Autumn”を、「tis」と歌っていたので「tizと歌んだよ」と教えて上げました。余所で歌って恥をかくと可哀想だから敢て注意をしたという次第です。そんなことがあって、脳みそが他にどんな歌がある?と言いだしました。

 ’Tisという略語を使っている歌は?”My Country, 'Tis of Thee(別名America)”は英国国歌「女王陛下万歳」のメロディをそのまま使い、Samuel Francis Smithが1831年に書いた古い歌である。実際、1931年、フーバー大統領の時に「星条旗」がアメリカ国家として採用される前は、事実上の国歌として歌われていた。先日、亡くなってニュースにもなったAretha Franklinがオバマ大統領の就任式で熱唱したのを憶えていますか?

 

日常の文章や英語の教科書などではほとんどお目に掛からない「'Tis」という略語も、歌の中にはよく出てくるのです。Americaには、’Tisだけでなく、theeやthyが出て来ます。 


Stephen Collins Foster
(1826-1864)

 フォスターの"Old Kentucky Home"は幼稚舎生の頃、口ずさんだ記憶があります。1852年の作です。この歌に「'tis」という歌詞が出てくるのです。よくぞ、思い出しました。

歌詞を調べたら、正しかった。一番だけ書いておこう。今の人、フォスターなんて知っているのかなぁ・・・。当時、おおスザンナ、スワニーリバー、オールドブラックジョーなんて英語の歌詞のまま口ずさんだものだ。思い出すと懐かしさが込み上げてくる。名曲ばかりです。
 

The sun shines bright in the old Kentucky home,
'Tis summer, the people are gay;
The corn-top's ripe and the meadow's in the bloom
While the birds make music all the day.

The young folks roll on the little cabin floor
All merry, all happy and bright;
By'n by hard times comes a knocking at the door
Then my old Kentucky home, Good-night!

Weep no more my lady. Oh! Weep no more today!
We will sing one song for my old Kentucky home
For the old Kentucky home, far away.
 


Frederic Weatherly
(1848-1929)

 ”Danny Boy”を憶えていますか?若い人は知らないかもしれません。戦後になって、この歌を唄ってヒットしたのはハリー・ベラフォンテというカリプソを世に出して有名になった歌手です。”バナナボート・ソング”で大ヒットでした。ベラフォンテの歌詞を憶えていますか?「'Tis」なんてどこにも出てきません。そうです。彼は「It's」と歌っているからです。

It is = It's = 'Tis

ですから、間違いではありませんが・・・。
 

 

https://youtu.be/9eddDlj3Jn0

Oh, Danny Boy, the pipes, the pipes are calling,
From glen to glen and down the mountain side.
The summer's gone and all the roses fallin'.
It's you, it's you must go and I must bide.

But come ye back when summer's in the meadow.
Or when the valley's hushed and white with snow.
It's I'll be here in sunshine or in shadow.
Oh, Danny Boy, oh, Danny Boy, I miss you so.

この歌の旋律は、もともとIrish民謡の"Londonderry Air"です。歌詞の中のpipeは煙草ではありません。バクパイプのことです。

珍しいアカペラグループが歌っています。ベラフォンテと歌詞が違います。原詩で歌います。

 

https://youtu.be/SfGTq71VXfo

Original Lyrics by Frederic Weatherly(1913)

Oh Danny boy, the pipes, the pipes are calling
From glen to glen, and down the mountain side
The summer's gone, and all the flowers are dying
'Tis you, 'tis you must go and I must bide.

But come ye back when summer's in the meadow
Or when the valley's hushed and white with snow
'Tis I'll be here in sunshine or in shadow
Oh Danny boy, oh Danny boy, I love you so.

あのエルビスが歌っているビデオがありました。

 

https://youtu.be/J_CcmOcBuzI

驚きませんか?前半は'Tisと歌いました。

Whetherlyが”Danny Boy”を書いた1913年とは、第一次世界大戦が始まる前の年でした。ヨーロッパではそういう空気が流れていたのです。最愛の息子、Dannyを戦地に送り出さなければならない親の気持ちと別れを歌ったものだったのです。

世界はまた大戦を引き起こすのでしょうか?(2018/11/7・かっぱ) 


次の稿
FEST