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思い出のニュー・ヨーク
その3−ロックフェラーセンター


田中 博(20期)


リンカーン・センターが音楽や芸術の場とすれば、ロックフェラー・センターはマスコミ関連企業なども入居するオフィスビルやラジオ・シティ Radio City Music Hallという劇場、冬は露天のアイススケートリンク、そしてアール・デコ様式の装飾がアクセントとなる19のビルの集合体で1930−1939年に建設されました。懐かしのレーベルのRCAビクター(後にはRCAレコード社、RCA: Radio Corporation of America、RCA社がGE社の傘下を経て1986年に解散するなどの変遷を経ていますが、RCAはブランド名として残っています。)が入居していたビルはGEビルという名称を経て現在はコムキャストビルと名称が変わっています。1990年には三菱地所の現地子会社が実質的にロックフェラー・センターを所有し、アメリカの魂を日本企業が買ったと反発を受けたこともありました。強固な岩盤のニューヨークに建つ直線美を生かしたビルは見どころ満載です。ビル名称 30 Rockefeller Plaza(570 Lexington Avenue 、Comcast Building)の70階にはTop of the Rock® という名の展望台があります。見学ツアーもありますので、NYにいかれたらぜひ訪問してみてください。


Comcast Buildingを見上げる

写真にある下の左右のビルは、左が610 Fifth Avenueまたの名がLa Maison Francaise、右が620 Fifth Avenueまたの名がThe British Empire Buildingです。

続いてはニュー・ヨークのウィンター・シーズンの風物詩とも言えるThe Rink at Rockefeller Centerのスケートリンクとクリスマス・ツリーです。

ツリーのトップの星は“Swarovski Star”(Swarovski Crystal Star)と呼ばれており、スワロフスキ社のクリスタルが用いられています。


クリスマス・ツリーが設置される場所

ロックフェラー・センターのクリスマス・ツリーの装飾は1933年に始まっており、点灯式は1951年からNBC放送で中継されているとのことです。

2003年の11月に撮影した面白い写真があります。上の写真と見比べてください。懐かしいポップ・アートとロックフェラー・センター。ルイヴィトン(LOUIS VUITTON) とのコラボにみられる村上隆のテーマデザインがニューヨークっ子を驚かせました。

次に、外部に見られるアートを紹介いたします。

Paul Howard Manship (1885-1966)の1934年の作品“Prometheus” です。

背景は

さらにズームアップするとドイツ生まれで米国に移住したLee Oscar Lawrie (1877-1963) と英国の色彩画家Leon-Victor Solon (1873-1957)によるイザヤ書33:6の一節を表現した“Wisdom”(副題: A Voice From The Clouds with Light and Sound)が描かれています。

WISDOM AND ★ KNOWLEDGE
★★★ SHALL BE THE ★★
STABILITY OF THY TIMES

このレリーフの人物は、英国の詩人・画家ウィリアム・ブレイク William Blake (イングランドの国歌扱いされている 『エルサレム』“And did those feet in ancient time”、Sir Charles Hubert Hastings Parry作曲、の作者として知られる)が描いた象徴体系的人物であるユリゼン(Urizen)から着想を得ているとのことです。’無知’を現す雲を吹き飛ばし、コンパスで宇宙コスモスの力と宇宙ユニバース全体を計測し記録している姿を表現しているとのことです。下のガラスブロックは商標名ゴリラガラス(iPhoneに採用)やパイレックスで知られるCorning Glass Works社が製造を担当したものです。

“And wisdom and knowledge shall be the stability of thy times and strength of salvation; the fear of the Lord is his treasure. ” (21st Century King James Version)
「主はあなたの時を堅く支えられる。知恵と知識は救いを豊かに与える。主を畏れることは宝である」(新共同訳)

日中に観ると、アール・デコと直線のビルが不思議に調和していることが解ります。

620 Fifth Avenue, The British Empire Buildingの入口の上部にあるのが、ドイツ生まれのアメリカ人Carl Paul Jennewein (1890-1978)の“Industries of the British Empire”という題名の作品です。 9つの大英帝国を支える産業、すなわち、Coal, Fish, Salt, Tobacco, Sugar,そしてオーストラリアのWool, カナダの Wheat,アフリカの Cottonが題材とされています。中央下の太陽は「大英帝国に日の没するところなし」を表しています。上部には英国王室の紋章Royal coat of arms of the United Kingdomが取り付けられています。紋章にはガーター勲章に記されていることで知られる “Honi soit qui mal y pense”(悪意を抱く者に災いあれ)と“ Dieu et mon droit”(神と我が権利)<中世フランス語>が書かれています。

相対する610 Fifth Avenue, La Maison Francaiseの正面を御覧ください。フランスのAlfred Auguste Janniot (1889-1969)による作品です。上部はGallic Freedom (French Freedom), フランス共和国を象徴するMarianneを現すと思えるアールデコ様式の女性と Liberte, Egalite, Fraternite (自由、平等、博愛)の文字がみてとれます。下のゴールド色の内容は“Friendship between France and New York” を題材にしており、向かって左側がノートルダム寺院が描かれ FLUCTANT NEC MERGITUR (古典ラテン語)、「たゆたえども沈まず」のパリと右側の高層ビルが建つニューヨークが手を繋ぐ姿となっています。

The British Empire Buildingと La Maison Francaise の間には“The Channel Gardens”と呼ばれる水のある空間が設けられています。

まだまだ尽きることのないアール・デコ芸術の宝庫といえるロックフェラー・センターで、きりがないのですが、次は1250 Avenue of Americas のエントランスのモザイクの一部です。

米国のBarry Faulkner(1881-1966)の作によるモザイクの壁画‘Intelligence Awakening Mankind'(理性に目覚める人類)の中心にある “THOUGHT”(intelligenceの意)です。左右の二人は使者で、男の方は‘WRITING WORD’、女性の方は‘SPOKEN WORD’とあります。

隣のビルRadio City Music Hall, 1260 Avenue of the Americas の写真をお楽しみください。このホールもアール・デコで満載です。

外壁に取り付けれているアール・デコ様式の金属とエナメルによる、Hildreth Meiere (1892-1961) という女流アーチストと、金属部分の加工はドイツ生まれのアメリカ人 Oscar Bruno Bach (1884-1957)の作品である3枚のプラーク ‘Dance’, ‘Drama’, ‘Song’と呼ばれる題材のなかの‘Drama’という作品です。

内部のグランド・ロビーには巨大な壁画が描かれています。

アメリカ人Ezra Augustus Winter (1886-1949)による“Quest for the Fountain of Youth"(若返りの泉を求めて)。照明器具は19世紀後半から20世紀なかばにおいて米国の照明をリードしたEdward F. Caldwell & Co.の作品です。

オーディトリアムへのドアはRene Paul Chambellan(1893-1955)のボードビリアンを描いた作品です。

部分拡大すると

ホール内部での特記事項として、このホールならではのオルガンがあります。
舞台の両袖にそれぞれ1台、計2台が“大きい(音)ことは良いことだ”とばかり、まるで往年の大きなアメ車が世界を席巻するがごとく、ホール内に音が響き回り(渡るというレベルを超える)観客を圧倒させます。それが“Mighty Wurlitzer”というオルガンです。

Wurlitzer社は 1988年にピアノメーカーのBaldwin社の傘下となり、21世紀に入るとBaldwin社はギターで知られるGibsonの傘下になっています。

Radio City では‘THE ROCKETTES’という名のダンス・カンパニーの公演が知られています。フレンチcan-canや宝塚とは趣の異なるダイナミックでリズミカルな‘Eye-High Kicks’はアメリカの大衆娯楽の層の厚さそのものです。

2012年12月21日撮影のホール内ロビーにあった液晶画面によるTHE ROCKETTESの85周年記念のCHRISTMAS SPECTACULAR の案内(著作権保護のため一部を加工しています)。

最後の画像は、Comcast Buildingの70階の屋上にあるTop of the Rock® での結婚式の様子です。
年齢的には新郎新婦ともに多くの経験を積んできたものと思われる二人の宣誓のシーンを‘勝手立ち会い人’としてショットにおさめました。上の階からでしたが祝福の拍手をおくりました。

次回、想い出のニューヨーク その4はクリスマスシーズンのウィンドウなどのディスプレーを撮影したものを予定しています。

2021年11月24日


編集部: 田中博君から「思い出のニューヨーク(その3)」が届きました。

まだ終わりません。楽しみにしましょう。

(2021/11/24・かっぱ)