その他の趣味・同好会

コーロ・エスプレッシーボ

2015年福島復興支援演奏コンサート 旅行記

(2015年9月22日〜23日)

池田 龍亮 (11期)


3.11の東日本大震災からの福島の復興を祈り、2012年から現地へ赴きチャリティ演奏旅行を行ってきました。

今年も9月の連休の時期に「復興支援コンサート」を南相馬市と郡山市において、現地の合唱団、合奏団の皆様の参加もあり、意義ある支援コンサートを開くことができました。

いつも「楽友」の場を借りて、コーロ・エスプレッシーヴォの活動通知・報告を掲載させていただき有難うございます。前回に続き、チャリティ旅行にサポーターとして参加してくれました鈴木涼太さんに旅行記の編集をお願いしました。(2015/10/24・池田龍亮)


・第1日(2015年9月22日)

朝6時45分に、都立大学前駅付近から貸切りバスで出発。コーロのメンバー26名(女性16名、男性10名)、サポーターは23名(女性13名、男性10名)、合計約50名の大団体で、バスは最後列まで満席。サポーターは昨年の倍であり、コーロの活動への応援者が増えた事は本当に嬉しい事。1日目は南相馬市、2日目は郡山市で演奏会。シルバーウィークで20〜23日は4連休、交通渋滞が心配されたが、早朝の出発が幸いしてか、順調に進み、今春全線が繋がった常磐道高速道で一気に南相馬ICまで行けた。福島原発に近づくと、高速道路沿いの所々に放射線量の表示装置があり、楢葉町付近では0.2μSv/hであったのが、福島第一原発付近の大熊町辺りでは4.6μSv/hまで上がっており、帰還困難区域の無人の町が高速道路の下に見える。あの大震災の日から4年半も経ったのに、ここでは時が止まったままのようでした。

開通せし 常磐道の 路肩には 電光掲示が シーベルト示す

南相馬市の会場は昨年と同じ「ひばり生涯学習センター」、鎌倉時代から今に続く相馬家の祭事である相馬野馬追の行なわれる雲雀ケ原の近くにある立派な地区センターです。入り口には立派な毛筆で、「コーロ 第4回お茶っこうたごえコンサート 〜南相馬市復興支援のために〜」と書かれた大看板が立ててあり、感激するのも束の間、ロビーに入ると、地元の客演団体の皆さま(ひばりハーモニカ愛好会、原町混声合唱団、さらに今年新たに参加して下さる南相馬市女声合唱団・はなみずき)が、全員で、コーロとサポーター全員を、拍手で迎えて下さいました。「第4回」の文字の中に、この活動の年輪を経てきた、お互いの感謝の結びつきと、喜びを強く感じました。

会場には既に地元の皆さんの手で、客席が整然と並べられていて、直ぐにステリハ開始、池田さんの熱の籠った合同演奏の指導で直ぐに一体感が醸成され、予定時間をオーバー、昼食を大急ぎで済ませ、いざ本番。1時半から3時まで休憩無しのハードな演奏会でした。、オープニングの「谷間の教会」を歌いながら幕が左右に開いて開演、MCの滝川さんが、「今年で4年目となるコンサートで・・」とご挨拶を始めると、会場から静かで深いどよめきが湧いた。大震災から5年近く経った今でも、福島のことを忘れずに応援に来てくれたのだという、地元の方々の心の中からの、深い思いのどよめきだと感じられました。

会場のお客様は約150名、仮設住宅に入居されているご高齢の方々より、少し年下の年配の方々が中心かと思われた。今年は仮設住宅の方々のバス送迎は、敬老行事等で皆さまの都合がつかないとのことで、南相馬でも郡山でも行わなかった。仮設住宅の方々を想定しての、送迎付きで演奏会に来て頂く時期から、地元で復興に取り組んでおられる方々への、心の支援に変わりつつある節目の年かとも思った。それだけに一層、今でもオラホ達を忘れないでくれているんだ、と言う連帯感が強まるコンサートに思われました。

 
コーロの、日本抒情歌曲のステージで心をほぐした後は、客演の原町混声合唱団のステージ、総勢12名の合唱団は、井上先生の指揮のもと、水・雨・海、をテーマとした「水のいのち」から2曲。
南相馬市の被害は津波によるものが大きく、演奏そのものが津波災害への鎮魂歌とその先に続く希望とも聴こえました。

続くコーロのステージは、懐かしいミュージカルで、明るく盛り上げた。「ドレミの歌」では、ドではドーナツの張り型を持ち上げ、ラではおもちゃのラッパを吹くなど、振り付けが楽しく会場にも笑いが一杯。尤も、合唱団は反射テストをされているようで其々の持ち分の音のグッズの持ち上げを間違いなくするのが大変そう、お客様もそれが分かるから余計に楽しみました。

 
最後の「踊り明かそう」では、コーロの男性3名がフロアに降りて、客演グループの女性とダンスを踊りつつの演奏で、会場は大いに盛り上がりました。
次に、ひばりハーモニカ愛好会が、総勢16名で、「南国土佐を後にして」を始め、年配の聴衆には懐かしくて堪らない曲を熱演しました。愛好会の橋本会長は、コーロの演奏会旅行について、南相馬側の取り纏め役として大変ご尽力して頂いています。
 
毎年大看板を書いて下さる桜井さん、愛好会指導を通じ、コーロと南相馬との結びつきの契機を作って下さった林博太郎先生も演奏に加わり、ハーモニカの懐かしい音色を会場全員が堪能した。

 
続いて、南相馬市女声合唱団・はなみずき、が登場。「この街で」の曲で、災害に遭ってしまったが、力強く故郷の町で生きていこうという心を歌う。

指揮の村田先生を含めて16名。厚みのある声量で、爽やかな演奏が印象的で楽しみました。
 

「この街で 生まれ育って 生きてゆく」と 南相馬の 女性コーラス

そして、このコンサートの復興支援の願いを込めた、コーロの「MI-YO-TA」と「大地讃頌」。追悼から未来に向けての希みを熱唱。会場も一段と想いを深めました。

合同演奏の最初は、ハーモニカの林先生が作曲された「福島県民讃歌」、仙台から駆け付けて下さった作詞の坂井先生も、林先生の横に加わり、会場の皆さんと全員で合唱。

二曲目の合同演奏は「いのち」。この曲を作詞・作曲された古木涼子さんは、イエスのカリタス修道女会のシスターとして、ローマの本部で活躍されていますが、つい最近、この修道会の総長となられたとの事。「命がこんな尊いのは、この世にたった一つだから」、まさに人のいのちの尊さを思わずにはおられない、心を洗われる歌でありました。

ラストは、会場全員の斉唱で「花は咲く」、「故郷」、「赤とんぼ」。会場の皆さんも、背中に負われて見た昔の故郷での光景や、肉親や友人を思い出して涙をこらえて歌いました。

 
アンコールは、チャプリンのSmileと、汽車ぽっぽの歌。明るい笑顔で終わった後は、お客様と楽しいお茶っこ。

コーロ団員の守本さんとお仲間による、お手製のケーキパンも大好評でした。

演奏会場を後にして、ホテルにチェック・イン、しばし休息の後、夕食は地元の客演の皆さん達も含め、ホテルの宴会場で打上げ会。橋本会長の開会の辞では、皆さまに今年も再会できて、「喜色満面」の4文字が我々を若返らせてくれる、長く続く交流こそが地元を元気付けてくれると感謝の言葉を頂きました。

また、池田さんの所属するカトリック鷺沼教会の松尾神父様(お茶っこ当番サポーターとして参加)からも、「若い方々に東北の被災地に一泊でも良いからともかくも現地に行って、出会いの経験をして、復興支援のお手伝いをしていらっしゃいと励まして支援をしている。コーロの復興支援の活動についても、池田さん始めコーロの皆さんが、長く継続して行かれる様、期待している」とのお話がありました。

更に、「コーロと、この福島県の諸団体を結び付けて下さっている、二本松市在住の柳沼千賀子さん(福島やさい畑活動の代表者:風評被害に悩む福島県の農作物を首都圏などに持参して出向いて販売する支援)に深く感謝します」とのご紹介をされました。柳沼さんはこの二日間にわたり自家用車でコーロに随行して受付などの支援もして下さいました。

各グループの自己紹介やアドリブの演奏が続き、果ては相馬野馬追の盆踊りを全員で踊り始めるハプニングもあり、打上げ会は最高潮に達し、最後は、コーロの「Everytime We say goodbye」、そして全員で「今日の日はさようなら、また会う日まで」の大合唱で、再会を期して、お開きとなりました。

コンサート 終わりて夜は 親睦会 相馬盆唄 輪になり踊る


池田さんが抱えている袋は、橋本会長から贈られた、鳴いている鈴虫

・第2日(9月23日)

朝8時前にホテルを出発、渋佐海岸方面の上渋佐地区の慰霊碑に向かう。佐藤行政区長(住民はゼロの行政上の区長さん)がバス車中で説明をして下さった。コーロは昨年は、上渋佐よりもっと海に近い下渋佐地区の慰霊碑にお参りをしたが、上渋佐地区はそこより内陸部に入った地区ではあるが、十数メートルの高さの津波は内陸3Kmまで押し寄せて来たので、上渋佐地区の38戸も津波で消滅、15名の高齢者の方々が犠牲となられた。

はじめに、渋佐海岸の防潮堤まで行って防潮堤の修復工事状況を見た。堤はまだまだ未完成で、その向こうに嘘のように穏やかな太平洋が見える。この静かな海を千年に一度と言われる大津波が襲ったのだ。そして海岸からUターンして、昨年度お参りをした下渋佐地区の慰霊碑と八坂神社を車窓から遠望し、黙祷で遥拝した。橋本さんはこの地区にご自宅があったが、跡形も無い。その後、内陸部に少しだけ戻って、上渋佐地区跡に今年建立された慰霊碑に到着。8名の方が黒い紋付袴の正装で、法螺貝による歓迎の礼奏で出迎えて下さった。法螺貝では7音階の音が吹けるので、色々な儀式用の曲がある、とも伺った。

献花、慰霊碑文の朗読、法螺貝の鎮魂の奏と、全員合唱による聖歌等で慰霊の献奏を行い、松尾神父様と一緒に、「東日本大震災被災者のための祈りU」を全員で唱えて犠牲者のご冥福を祈りました。法螺貝の送奏の曲が響く中、慰霊碑を後にして郡山市にと向かった。

朝まだき 紋付き袴の 奏者らの 慰霊の法螺貝 天に響けり

上渋佐 震災慰霊碑に ぬかづけば 村消えし地に 秋風渡る

一般道で浪江町を通過。ここは帰還困難地区のため、無人の立派な街並みが続く。何ともやるせない光景である。町を過ぎて暫く進むとバリケードがあり、「ここより先進入禁止の」の検問所があった。

仕方無いので一般道で二本松市経由で郡山市に行くのは断念し、高速道路でいわきJCTまで一気に南下、磐越自動車道で郡山市を目指した。まだまだ除染作業は進んでいないのだ。地図で見ると、福島原発から浪江町までは北北西に帰還困難地域が20Km以上も細長く続いている。風の通り道であることと、集落が盆地になっており、汚染した放射能が滞留しやすい地形であるかららしい。帰還困難地域、居住制限区域、避難指示解除準備区域、そして避難解除区域と分類されているが、隣接している町村でも分類が変わってしまう。これによって慰謝料の支払い等にも、格差を生じるケースが出てきて、被災者の皆さんの間にも、複雑な感情的葛藤があるようだ。

秋風の 野山に積まれし 放射性物質の山  シートかぶりて

迂回後、高速道路を利用したので、11時には予定通り本日の演奏会場である郡山市音楽・文化交流館「ミューカルがくと館」に到着出来た。Music & Culture 楽都館の愛称である。郡山は戦後昭和27年には交響楽団が結成された音楽の都であり、日本のWienであるという市民の誇りが込められたネーミングとの事。

午後1時開演。約180名もの大聴衆で客席がほぼ満席、郡山は初めての演奏会にも拘わらず、予想外のお客様のご来場に、演奏側も力が入る。

この演奏会は客演が2団体、カトリック郡山教会聖歌隊と、ハーモニカのアンサンブル・エコーズである。郡山市での演奏会は、「コーロ うたごえ チャリティ・コンサート」と銘して、「音楽都市こおりやま市民音楽祭」参加行事として登録、チャリティー・コンサートは、郡山教会の復興支援活動を献金先とした。

お客様は仮設住宅の方をバスで送迎することはしなかったので、ご高齢者は少なかった。いつものオープニング後、日本抒情歌曲に入る。一曲毎への拍手のタイミングや長さも整然とした感じで、なるほど、ここは楽都だと感じる。

客演のカトリック郡山教会聖歌隊が「マリアへの祈り」「来なさい 重荷を負うもの」の聖歌と「水のこころ」を、隊長鈴木さんを始め15名の女声コーラスで清楚に歌われた。

コーロのドレミの歌には最後の方で、ウィーンフィルのラデツキー行進曲のように、聴衆から自然に手拍子入り、「楽しい歌ね」の感想が聞こえて来た。

また、客演のハーモニカのアンサンブル エコーズは男性6名、女性2名の総勢8名のこじんまりとしたグループであるが、バスやコードの特別なハーモニカを含んでおり、しかも第1パートでは音域の異なる3種類ものハーモニカを持ち替えつつの高度な演奏で、「高原列車は行く」など懐かしいメロディーを、楽しく奥行きを持って聴かせてくれた。

コーロの「MI-YO-TA」「大地讃頌」の追悼と希望の歌2曲の後、合同演奏に入った。

モーツアルトの晩祷から、Laudate Dominum(主をほめ讃えよ:詩編117)と、フォーレの鎮魂曲から、In Paradisum(天の国へ)の2曲が、郡山教会聖歌隊の鈴木隊長のソプラノ・ソロを入れて、美しくも荘厳に歌われた。最後に、古木シスター作の「いのち」を合同合唱。演奏会プログラムの表紙に副題に書かれている「福島の復興と平和を祈って」に相応しい歌の連続、最後に、みんなで歌おうの曲目を会場と一体となって歌った。

聖歌隊と 合同演奏「いのち」の曲 「生きて、生きて」と 切々せつせつ 歌う

これで終わりと思われそうになった時、指揮の池田さんが「アンコール曲を忘れていました」とJokeのように切り出し、チャプリンのSmileをサービスして、盛大な拍手のうちに、郡山市での演奏会も無事に終了した。

「楽しかった!」と 笑顔で帰る お客様 見送る我らも 心満ちたり

演奏会後、茶話会。そして会場の前庭で、池田さんから郡山教会の信徒代表の平さんに、当日の献金として集まった51,000円余りを、今後の郡山教会の復興支援活動にお役立てくださいとご挨拶してお手渡し、無事、チャリティー・コンサート終了。

連休最終日で交通の渋滞が心配されだが、既に帰省からのリターンはもう前日で終わっており、順調に帰京できた。今回も心に残る素晴らしい二日間の演奏旅行でした。

コーロの皆さま、サポーターの皆さま、これからも東北被災地区の方々が、心まで救われる日まで、共に支援していきましょう!

震災で 家族とふるさと 失ひし 福島の人に 寄り添ひゆかむ

完  


2015年 コーロ・エスプレッシーヴォ 福島演奏旅行参加者

団員参加者:

浅海栄子、池田百合子、磯田裕子、上野和子、加藤友子、杉原洋子、林 満枝、安室順子池田淑子、上田愛枝、桑野晴子、越真理子、瀧川佳代、平岩政子、守本喜和子、守本裕美 斎藤成八郎、佐良土雅文、戸張 勁、福井良太郎、藤原隆義、池田龍亮、浅海直之、池田 進、清水康昭、蓑田逸朗

サポーター参加者:

柳沼千賀子(福島演奏会インキュベーター兼サポーターとして特別参加)
吉海健治、千葉修一、鈴木涼太、松尾 貢、山野尊行、西井愛子、上林一英、馬場幸一郎、道江紳一、藤原礼子、川添陽子、大石博国、根岸亞麗朱、佐良土美恵子、深澤恵子、町村ひろ子、篠崎恭子、竹内史子、影山シヅ子、小林輝久、小林智美、金行陽子

 旅行記・記録: 鈴木 涼太
写真提供: 千葉 修一
馬場幸一郎
短歌寄稿: 藤原 礼子