記念資料集定演プログラムから)

「第10回定期演奏会」プログラムから

1961年12月17日/於:文京公会堂

 

 




W.A.モーツアルト「REQUIEM」
指揮/岡田忠彦
管弦楽/ワグネル・ソサイエティー・オーケストラ
独唱/土井富美子(S) 、西内玲(A) 、波多野靖祐(T) 、田島好一(B)


慶應義塾長(1960-1965) 高村 象平

楽友会は、本塾の学生文化団体の中でもユニークな混声合唱団でありますが、今宵の第10回定期演奏会という記念すべき催しにあたって、会員はじめ関係者は自負を持ってその熱意を注いでいることと思います。

学生が学業に励むかたわら、それぞれの意向に応じて、真理と美の探究や技能の修練に自己を投入できるのは、学生生活の特典でもありましょうが、同時にそれは彼等の将来において、社会の先導者たるにふさわしい人格形成に、なみなみならぬ役割を演ずるものと信じます。

したがって学生の課外の催しには、その出来栄えなりあるいはその態度について、学生のものとしての観点からご覧願いたく、またその観点にたってご批判を煩わしたいと考えます。私は楽友会の今後の発展を期待して見守る者の一人として、本日のこの演奏会にお集まりくださった方々のご好意に感謝いたします。


村田 武雄

数多くある名作の中で、常に心にとめておきたい一つがモーツァルトの「レクイエム」です。それだけに理想とする演奏になかなか廻りあえません。実演でもレコードでも。技術と精神とがこんなにも信仰や誠心をもって音楽となっている場合も少ないからです。楽友会がどこまでこの音楽の真実を伝えてくれるか楽しみです。

もう第10回の定期演奏会を迎える楽友会は、常任指揮者である岡田忠彦さんの音楽の良識と情熱とが、若い人々の努力を導いて、いつも何か音楽の純粋さに触れる歓びを与えてくれました。楽友会のメムバーがこぞって誠実に音楽を行おうとするところにその純粋さが造られたのだと思います。

又その誠実と純粋な熱意とがモーツァルトの「レクイエム」を歌うのには最も必要な条件の一つなのです。技術があって魂のないこの曲の演奏があまりにも多すぎます。めいめいが心に音をよく感じて歌っているかいないかがこのくらいよく伝わる作品もありません。それだけ音楽が純粋だからです。

岡田さんと楽友会にはこの「レクイエム」に対して何かが期待できそうです。今は誠実な演奏をもって第10回の定期演奏会を立派に意義づけることを心から祈るばかりです。


皆川 達夫

このたび慶應義塾楽友会が,第10回定期演奏会を迎えたことを心からお喜び申しあげます。 10年前と申しますと、私が義塾高校で音楽の講義をもっていた時代であり、楽友会の成立のいきさつも多少関知しておりました。予期以上の発展をとげて、現在では塾の文化団体の中でも、有力な存在となっている事を知り、大変うれしく存じます。

ことに今度の演奏会では、16・17世紀のポリフオニー合唱曲を取上げておられます。ご承知の通り、この時代は合唱音楽が高い発展をとげていた黄金時代であり、その作品は今日の我々に真の合唱音楽の喜びを伝えてくれます。ところが、そのスタイルがあまりにも今日の音楽とはちがっており、しかも技術的な問題もからまって、わが国ではなかなか演奏のチャンスがありません。このたび楽友会が、積極的にこうして忘れられ去られ合唱の名作を掘り起こそうとしていることは、楽友会の技術的進歩と充実を示すものといえましょう。

また間宮芳生氏の「混声合唱のためのコンポジション」およびモーツァルトの「レクイエム」を取上げたところにも、楽友会メンバーの並々ならぬ意欲がうかがわれるように思います。演奏会のご盛会を祈ってやみません。


常任指揮者 岡田 忠彦

楽友会は今宵第10回定期演奏会を迎えることとなりましたが、その母体であった「音楽愛好会」ができたのは、今から14年前のことになります。その間には多くの卒業生を社会に送り、それぞれ立派な活躍をしておられることは、10余年、会に関係してきた私として、まず、お慶びを申しあげます。

現在の会はこのプログラムの出演者名簿をご覧になってもお分かりのように、塾の音楽団体として、最も人数の多いほうの一つではないかと思われます。しかし男女のバランスは、塾全体の男女の比例を自ずと示すことになってまいります。

現役の会員諸君は、今回を記念して、よりよい会でありまたよい演奏会であるように、塾生としてできる限りの努力を払って、この定期演奏会を迎えました。この合唱団の発展のためご尽力賜わった先生方、ご父兄、諸先輩、その他の方々に厚く御礼申しあげますと共に、今後とも、ご支援ご鞭撻くださいますよう、どうぞ、お願い申しあげます。

    


編集部注

@ 草創期からじっこんにして頂いた有馬先生からのご祝辞は「記念資料集」の「有馬大五郎語録」コーナーに、他のご寄稿と共にまとめて掲載してあります。

A 当日のプログラムは3部構成で、1〜2部が伴有雄君(OB/1期)の指揮による(I)古典合唱曲集(G. P. da Palestrina/O. di Lasso/J. S. Bach等のMotetやイギリス古謡など全7曲)と(II)間宮芳生氏の「混声合唱のためのコンポジション」で、休憩をはさんで(III)の岡田忠彦先生指揮によるMozart・Requiemが、楽友会初の全曲演奏を果たしました。

出演者は合唱がソプラノとアルト共に各27名/テノール48名/バス47名の総勢149名、それに客演のワグネル・ソサイエティー・オーケストラとプロ4名の独唱者を加えた協演で、当日が日曜だったこともあり、出演者家族や先輩団の来場が多く、会場は満場の聴衆で、あたたかい盛大な拍手に包まれていました。

B Mozart・Requiemはこの時以来10回の公演(ちなみに次位はFaure・Requiemで7回)を重ね、「楽友会」の重要なレパートリーの要となりました。しかし、岡田先生のご退任(1992年)と共に忘れ去られ、楽友三田会と共催の創立50周年記念演奏会(2001年)を最後に、現在まで全く顧みられことはありません。遺憾に思います。

C 幹事長:佐野康夫/副幹事長:安永いく子/渉外:工藤耕二・林啓子/会計:豊岡守紀・浅野美代子/練習:長谷光男・松村紗世子/学生指揮者:遠藤琢雄・野本陽一・三戸義昭

(2014年12月30 日/オザサ)


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