慶應義塾大学混声合唱団楽友会

 

これも合唱だったのか!

松本宏太(57期/経3/T・サブパートリーダー)

私は高校まで野球しかやってこなかったような人でした。合唱はもともと好きでしたが、部活動の経験は全くなく、中学での年に1回の合唱コンクールで思いっきり歌う、男子校での男声合唱の授業で思いっきり歌う、という程度のものでした。私は「合唱はただ立って歌うだけのもの」と思っていました。

大学で野球を続けなかったのは、高校時代に怪我をしたことが大きな要因の一つであり、野球は見るほうに専念しよう、と思ったわけです。(笑)さて大学では何を頑張ろう?と考えたときに、スポーツをやらないなら昔から好きだった合唱をやりたいな、と考えました。そして、どうせやるなら幅広い表現ができる混声合唱を。私は「ただ立って歌う」ことがしたくて入ったわけです。ところが、楽友会の先輩と定期演奏会ではどんな曲を演奏するのか話をしていたら、こう言われました。「ここ最近はシアターピースをやっているよ!簡単に言ってしまえば、身体表現をしながら合唱する、すなわち合唱劇みたいな感じかなぁ!」と。楽友会は合唱団じゃなくて、ミュージカル団体なのかなぁ?と、そのときは思いましたが、話を聞いているうちに興味がわいてきましたし、なにせ合唱をやりたかったので、楽友会に入団しました。

私が人生で初めて演奏したシアターピースは「食卓一期一会」、続いて去年の「星からとどいた歌」。どちらの作品も私にとっては決して忘れることのできない曲です。その練習は夏の強化練から始まりました。50分程度の曲であるため、曲数も多く、音とりや演出稽古に苦労しました。4カ月の練習で定期演奏会を迎えました。

演出稽古では、初めはついていくのに必死でした。歌の練習をせずに演出稽古をする。演出がついてきたら歌も一緒につける。ただし演出をしながら楽譜を持つことはもちろんできませんし…。苦労はしましたが、ものすごく充実した練習でした。「この動作をするのはどういう意味があるのだろう?」「この動きをすることによって、何かしらの物語が生まれる」などなど、演出家によく言われ続けました。私はずっとスポーツをやってきたので、合唱しながら身体を動かせるとは夢にも思っていませんでした。


「星からとどいた歌」の練習風景 2009年秋合宿

「どういう意味があってこういう動きをするのか?」…その質問に応えるには、しっかりと詞の意味を理解しなくてはいけません。演出稽古を始めてからは曲解釈の時間も多くなりました。私は「ただ立って歌う」だけのときではなんとなくしか見ていなかった詞でしたが、シアターピースを経験した今、詞の意味をよく理解することがものすごく大切なことだと感じました。私は現在、テノールのサブパートリーダーを務めさせていただいていますが、今ではどんな曲を始めるときにも、まず先に詞を全員で読んで理解してからパート練習を始めるようにしています。イメージをするかしないかではずいぶんと表現力も変わるなぁ、と実感しています。

動きながら歌うことは本当に難しいです。動く動作に集中していたら歌えない、逆に歌に集中していたら動きを忘れる…。でも、動きながら歌うことができたときの喜びは、経験した人にしかわからないものがあると思います。

私は入団した時、歌う時にはなかなかリラックスができず、身体が固くなり、声が楽に出せませんでした。しかし、動きながら歌うと、なんだかものすごく楽に声が出せたのです。野球部時代では声はひたすら出していた(出させられた)ので「動きながら声を出す」、ということはスポーツも合唱も同じなんだ!!と思いました。

まもなく大学生活も後半戦に突入します。野球で言うとグランド整備が終わったあとの6回表。まだまだ試合終了まで油断できません。点は取れるときにはコツコツ取らなければいけないのが野球のセオリー。合唱でも、コツコツと地道な努力を積み重ねることによって、最高の演奏ができることでしょう。点を取れるときに取らない、練習もできるときにしない、ということをやっていると、逆転サヨナラ負けをくらい、悔いしか残らないことになると思います。

私は幸いなことに、嫌いな曲は全くありません。どんなジャンルの曲も好きな曲ばかりです。曲解釈の大切さや、身体表現の難しさや面白さを教えてくれて、また一人ひとりが主役となれる場を提供してくれる「シアターピース」をはじめ、迫力のあるオーケストラと共に歌うこと、また全員の心を一つにして周りの音をよく聞きつつ歌うアカペラ曲などなど、いろいろな合唱にこれからも挑戦していき、悔いが残らない楽友生活を送りたいと思っています。(10年2月11日)