記念資料集有馬語録)

この世は若いものに限る

 

有馬大五郎(楽友会顧問)


この合唱団にいつも感心させられることは、演奏企画に誤謬を犯さないことで、日本人の音楽生活の将来にも健康な見透しをつけていること、時には玄人はだしの感を受ける。

こんどもモーツァルトがある。日本には天才が出ない。理由は人間が出ないからである。モーツァルトのような人間が出るまで、ここの団員はモーツァルトを歌いつづけるだろうし、シューベルトでも純粋な学生の呼吸から、心あらたに、長短両調性の妙味を味わうことも今日の日本人には意義深いことであろう。

日本人といえば、我々は日本人であるが故に、何らの仲介物もなく、率直に日本の声を世界に聴かせて、外国人にその是々非々を問う。国際文化事業の第一歩である。津軽民謡もそのつもりで聴けというのであろう。ハイ、感心します。全く「背負うた子に教えられ」である。

  第11回定期演奏会プログラム(62年11月11日)


編集部注: 
@ この日のプログラムはI. シューベルトの「混声合唱曲集(8曲)」指揮:舟山幸夫‐8期、ピアノ:鳩山満喜子−9期/II. 木村繁の「津軽の旋律(9曲)」指揮:大野洋−10期、ピアノ:日野原萬里子/III. モーツァルトの「戴冠ミサ曲」指揮:岡田忠彦、独唱:志賀朝子、浅野美代子−7期、塚越敏雄−8期、田島好一、管弦楽:日本室内交響楽団でした。

A 木村繁(1908~85/法政大学男声合唱団アリオンコール創設者/作曲者)の「津軽の旋律」を選曲・演奏したことは、有馬先生から絶賛を賜ったものの、その後は作・編曲者のお名前ともども合唱界から忘れ去られてしまったようです。そして木村氏も有馬先生も大野君も既に他界されてしまいました。

しかし、このまま埋もれてしまうのはあまりに惜しい、ぜひ、いつの日か楽友会で復活上演してもらいたい曲集の一つと思います。そこで当プログラムに掲載された貴重な各曲解説と歌詞、それに作曲者ご自身から寄稿された署名入り随筆とお写真をそのままの形で残しておきます。(2010/4/21・オザサ)

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この解説は学生指揮者であった故大野 洋君によるものです。

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