第1ステージ: 「子供のうた」
作曲者中田喜直氏は、ここで紹介するまでもなく、今日の日本で最も多くの人々から愛されている作曲家です。氏は、子供達に、美しく、夢のある、そして音楽的な歌を与えたいと、新しい子供の歌をめざして300近くの童謡を作っておられ、今晩の曲はその中の「かわいいかくれんぼ」という美しい子供の為の歌曲集を、ご自身で女声合唱用に編曲されたものです。こうした良心的な仕事は、大いに高く評価されるべきでしょう。
氏の作風は、やはりフランス音楽の系列に属するもので、特に女声合唱曲に、その良さが発揮されています。氏は、元来ピアニストであられたため、ピアノの響きを実によく知っておられ、今晩の7曲も、美しい伴奏に支えられた優雅な旋律をもっており、その流れは、一度聞いたら忘れられない魅力を感じさせられるものでしょう。
7曲の童謡は、すべて夏の風物にちなんだもので、大体、夜あけから夜までの順に並べられています。中田さんのさわやかな、美しいハーモニーにひたって、夏の暑さを、ひとときでも忘れて戴けたら、私達としても、この上のない幸です。
第2ステージ: 「三つの村の情景」
作曲者ベラ・バルトーク(1881〜1945)は、ハンガリーに生れ、ストラビンスキー等と並んで現代最高の作曲家ですが、若い頃から自国ハンガリー土着の民謡を研究、蒐集し、それを素材として、彼の音楽を発展させた人です。
バルトークは1924年にスロヴァキアの民謡をもとにして「村の情景」と云う全5曲からなる独唱曲集を書きました(特に女声の為にと指定)が、この「三つの村の情景」は2年後の1926年に、その内の第1曲「乾草作り」と第2曲「花嫁のそばで」を除いた第3、4、5曲を女声4部合唱に書きなおしたものです。独唱曲の方も現在出版されていますが、この合唱曲の方が伴奏も複雑さを増し、歌もずっと色彩的になって効果を高めています。バルトークの手法は民謡を生の形で使うのではないのですが、この曲の場合、非常に現代的なピアノのパートとの対比の上に素朴な民話が美しく浮びあがるという、絶妙な効果をあげています。
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