ドラマの主役・純少年(81年当時小学4年)とその妹・蛍(同小学2年)を演じた名子役たち(純=吉岡秀隆/蛍=中嶋朋子)の名演技が実によく状況にマッチしていましたが、そのシリーズは82年で終わりました。しかしその後、83年から年1回の特別ドラマとして続編が放映されました。
「'87初恋」は純の初恋がメイン・テーマではありますが、倉本作品はそんな単純なメロドラマでは終わりません。
その主題に並行して、父を真似て工作好きになった純が、電気のきていない北海道・富良野のはずれにある丸太小屋の自宅に、自作の風車発電機で明かりを灯すという重要な第2主題が進行していきます。
中学3年になった純は、父の誕生日に電気が点(つ)くように頑張りました。だが父は、純が自分に内緒で卒業後東京に出奔し、働きながら夜間高校に通うという計画を隠していたことを詰(なじ)り、逆に、激怒します・・・。
▼ 明かりが点いて家が明るくなったのか?いや、反対に父子間に亀裂が生じ、純は東京に旅立ちます。母親は他界し、初恋の相手は去り、蛍もやがて父親のもとを離れて行きます。一家離散です。
皆に喜びをもたらすはずの灯が、実は、それぞれの心の闇を照らし出し、結局は哀しみをもたらすだけの道具になってしまいました。これは現代に生きる私たちの世相を暗示しているかのようです。
昨年11月に来日されたブータン国王夫妻が住んでおられる地帯は、冒頭に紹介した夜の世界写真で見るとほぼ真っ暗で、全土が明るい日本と著しい対照をなしています。
世界に冠たる経済大国・日本とネパール山系の高地で、人口約70万の民がひっそり暮らすブータン王国を同列に論じるのはムリがあります。しかし「ブータンでは国民の97%が幸せを感じている」とか「GNHランキング(国民の幸福度順位表)でいえば日本は世界178か国中の90位で、先進国中最下位。特に若者、子供は極端に幸せを感じていない」といった論文や統計を読むと(辻信一編著「GNH―もうひとつの<豊かさ>へ―10人の提案」大月書店08年刊その他)、やはり<日本はこれでいいのか>と頭を抱えてしまいます。
楽友の皆さんと一緒に、今年はこうした問題も考えていきたいと思います。好きな歌を、好きな時に、好きな仲間と歌い続けていくことができるように。(オザサ・1月7日) |