Editor's note 2021/12

白紙の効用

Thomas Jefferson
(1743-1826)

アメリカ独立宣言の起草者として名高いアメリカ第三代大統領トーマス・ジェファーソン(在任1801-1809)の演説に関する話です。

ジェファーソンは演説の草稿を手にして、紙に視線を落としながら名演説を行いました。その演説が終ると手にしていた原稿の紙をポイとばかり落として演壇を後にしたのです。人々はその名演説の原稿を見てみようと駈け寄り拾い上げてみると、ただの「白紙」だったというのです。

さて、ガーシュインが"Raphsody in Blue"を初演したときの話です。この曲の中にはピアノのソロの部分があるのですが、用意された譜面のソロの部分は「白紙」だったということです。即興演奏で初めてのジャズ・コンサートをやったのです。


George Gershwin(1898-1937)

作られたソロ譜を覚えて演奏したソロは「書きソロ」と呼ばれます。

歌舞伎十八番の「勧進帳」をご存知だと思います。弁慶が勧進帳を読み上げるわけですが、富樫は勧進帳が「白紙」であることに気がついていても義経一行を通行させるお話です。

武蔵坊弁慶が手にもっている巻物が「勧進帳」で、東大寺の寄進の記録がされていることになっているのですが、じつは白紙の巻物であります。

即興、インプロビゼーションは突然のひらめきのように言われますが、彼の背後にある、その何倍、何十倍の知識、経験とすばらしい感性の所産であることを忘れてはいけません。ある晩、久し振りに大伴 昭氏とゆっくりジャズ談義をしたのですが、そこで出た印象的な話でした。

大学では、黄ばんだ古い講義ノートを持ってきては毎年同じ話を繰り返す教授がいるといわれます。ちなみに、私は教室にノートを持ち込まず、白紙どころかチョーク一本で授業をすることが日常でした。ですから、常に即興で演じていたのです。

ジェファーソン大統領は退任後にUniversity of Virginiaを創立し初代総長となったのです。亡くなる前の年まで、大学で教授として法律を教えていたのです。

編集後記 先々月の中頃、末続とのメールやり取りで「即興」「インプロビゼーション」「アドリブ」「協奏曲のカデンツァ」なんて話が話題となりました。

20年ほど前に、芳村真理さんのご主人、大伴 昭氏と珍しくゆっくりジャズ談義をした時の話です。大伴さんは、かっぱの1回り上で同じ1月生まれ、学生時代はワグネル男声で歌っていたのです。2018年12月に89歳で亡くなられました。大会社の社長を歴任された超有名な実業家でした。


2015年1月誕生会

(2021/12/7・編集部かっぱ)


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