![]() ![]() |
|
映画はかなりヒットしたようで、インターネットの記事によると当時大学のグリークラブがこぞって学生王子を取り上げたとある。しかし高校二年で合唱をはじめたばかりの私には、よその大学の演奏会まで手が回らなかったから、若杉さんに紹介されるまでこの曲を知らなかった。セレナーデのソロを仰せつかった時に、あわててレコードを探すとEPレコードでジャン・ピアースが歌ったのにめぐり会った。映画で王子役の歌をアテレコしていたのは、当時アメリカで人気のマリオ・ランツア(1921〜1959)だったということは、後に楽友会の菅野先輩に教えてもらった。先輩によると最初はマリオ・ランツアが主役の王子役をやることになっていたが、太りすぎて声だけの出演になったという。ついでに触れると映画の中で歌うセレナーデの歌詞は、ブロードウエイで上演されたときのものとは一部違う。インターネットの「映画Com」には「ヴィルヘルム・マイエル・フェルステルの『アルト・ハイデルベルヒ』に基いてドロシー・ドネリーが台本と詞を書き、シグモンド・ロンバーグが作曲したオペレッタの映画化で、〜中略〜皇太子の歌はマリオ・ランツァの吹込みである」という紹介があり、他のブログもオペレッタとしているものが多い。 これは、英語版のWikipediaが4幕物のオペレッタと書いているからか?中には「ウイーンで上演したのをアメリカに持ち込んだ」と書いたブログもあるが、これは誤り。作曲者のシグモンド・ロンバーグはハンガリー生まれのユダヤ系移民として米国に渡るが、The Student Princeを発表したのは1924年のブロードウエイであり、ミュージカルとして扱われることも多い。ブロードウエイでの初演から608回という公演数は、有名なショーボートの572回を上回っており、ミュージカルとして扱うほうがいいのかもしれない。(ロンバーグの伝記を映画化した「わが心に君深くDeep in My Herat1954年製作」は日本でも公開され、数年前にNHKBSでも上映されたが、このなかでブロードウエイの舞台が再現されている) このミュージカルの原作の戯曲「アルハイデルベルク」は、日本では1912年松井須磨子がヒロイン、ケティ役で初演され、その後も何回か新劇界では取り上げられている。岩波文庫(赤版)に翻訳が収録されているが、私は小学生のころロマンスという大衆雑誌に出ていたのを読んだ記憶がある。 1931年には宝塚少女歌劇団が「ユングハイデルベルヒ」として上演し、その後も繰り返し上演されたという。1977年には日生劇場で大竹しのぶと中村勘九郎によって「音楽劇 若きハイデルベルク」として上演された。 ロンバーグのミュージカル「学生王子」は1975年に東京二期会が岩谷時子の日本語訳を郵貯会館で上演しているというが、私はこのとき栃木の田舎で工場建設の真最中で残念ながら見ることはなかった。 今手元には残念ながら1958年当時の楽譜がない。今の家に引越しした時には持っていたが、地元の合唱団に面白い曲があるよと提供して行方不明になってしまったからである。どなたか当時の楽譜*をお持ちなら拝借したいと思っている。そして伊藤栄一編曲版の混声バージョンの日本初演**は何処の合唱団だったのかご教示頂ければ幸いである。 (2017/7/9) ■ ■ ■ ■ ■ |
|
![]()
|