随筆コーナー

2023年は中田喜直生誕100年


塚越敏雄(8期)


2022年7月末、40年の歴史を持った地元旭区の若葉台混声合唱団が解散した。さらに、職場つながりでやっていた男声ダブルカルテットも23年4月に解散コンサートをして活動を終了。OSF男声合唱団や、楽友会つながりのユニット「レッドパインズ」も休業状態が続き、コロナ感染は収まる兆しがない。傘寿を過ぎた身はこれでもう歌いじまいにしようかと考えていたが、心変わりして、かって歌っていた横浜混声合唱団(以下横混と略す。)に復帰することにした。横混指揮者の吉田考古麿さんが2年後に引退するというので、それまでの間、頑張ってみようと思ったのである(彼との縁は以前リレー随筆20年3月「横浜幻想」と「祝婚歌」に書いたから繰り返さない)。


中田喜直(1923-2000)

その横浜混声合唱団が、2023年の定期演奏会を中田喜直生誕100年記念(1923年8月1日中田喜直誕生)として、オール中田喜直プログラムでやることになった。中田喜直は1968年から77歳で亡くなる2000年5月3日まで横浜市旭区に住み、1953年から横浜山手のフェリス女学院で教鞭をとり、フェリス女声合唱団(後の日本女声合唱団)のために多くの女声合唱曲を書くなど横浜には縁の深い作曲家だった。奥さんの幸子さんは今も旭区の住人で、音楽出版ハッピーエコーの代表として中田喜直の楽譜を中心に出版し、女声合唱の指導もしている。今度の横混の生誕100年コンサートにも出演の予定である。


私が楽友会に入った1956年の楽友会第5回定期演奏会で、女声合唱のステージは故伴有雄さん指揮の中田喜直「女声合唱曲集T」11曲から7曲を抜粋したものだった。その2年後、1958年には故若杉弘さんが再び中田義直の「子供の歌」(後の童謡曲集だと思う)を第7回定期演奏会で取り上げた。中田喜直のこの二つの曲集は、合唱を始めたばかりの私に、今なお忘れがたい印象を残した。有名な「夏の思い出(第8曲)」や「雪のふるまちを(第11曲)」なども、女声合唱に編曲されてこの「女声合唱曲集T」に含まれているが、伴さんは「雪のふるまちを」は選ばなかった。第1曲「ぶらんこ」の「ひっそりとぶらんこが、花の樹かげです」とか、第7曲「青空の小径」の「朝が そっと 青空に立てかけた 黄金のハープ」あるいは第9曲「ねむの花」の「あなたはつかれた おねむりなさいというように」など60年以上たったいまでも口ずさめるし、2年後の童謡曲集では「森の夜明け」の「ぽりんぽりんかりんかりん」や「夕方のおかあさん」のソロのリフレイン「ごはんだよ」なども耳に残っている。男声合唱やミサ曲の楽譜は思い出さなくても、中田喜直のメロディは自然と出てくるのである。

中田喜直の死後、1周忌にあたる2001年5月3日、神奈川県立音楽堂(木のホール)で―中田喜直女声合唱作品を歌う―1000人の大合唱『黄色の楽譜』を持って集合!!というコンサートがあった。主催は中田喜直女声合唱作品を歌う「1000人の大合唱」開催委員会(吉田考古麿委員長・桑原妙子副委員長)で、音楽堂お母さんコーラス実行委員会が共催、後援は神奈川県合唱連盟などである。参加団体は80を越え、まさに1000人の女声合唱だった。黄色の楽譜とは音楽之友社が発行していた「女声合唱曲集T」の表紙の色である。オープニングは「おかあさんの歌声」、第1部は新刊楽譜紹介と銘打って女声合唱組曲「すばらしき自然とともに」が5つの団体と合同演奏で紹介され、後半は全員で「女声合唱曲集T」全11曲が歌われた。私はもちろん歌うことは出来ないから、会場係で参加し、みんなの歌声を聞きながら、45年前の演奏を思い出していた。

「女声合唱曲集T」の初版は1954年(昭和29年)9月発行である。楽友会が取り上げたのはその2年後だが、1979年(昭和54年)には第40刷となり、改訂の文字が扉に付いている。あとがきを見ると2刷、3刷で一部の曲のメトロノームのテンポ指示を変えたことが書いてあるが、それが扉に「改訂」と入れたことを指すのかそうではないのか、第何冊から扉に「改訂」が入ったのか、ご存じの方に教えてもらいたいと思う。「童謡曲集」の初刷は1960年5月だから、若杉さんは音楽之友社からの出版前に童謡曲集を取り上げていることになる。男声の私はもちろん当時の楽譜は持っていないが、女声陣はどんな楽譜を使ったのだろう。出版より前にフェリス女声あるいは日本女声あたりが「童謡集」を初演していたであろうが、若杉さんは誰からどうやって出版前の楽譜を手にいれたのだろうか?

(2023/8/29)

    


編集部 「楽友」の大事な文人塚越敏雄から原稿が届いた。これが、リレー廃止後、最初の「随筆コーナー」投稿原稿となった。バトンリレーをF君にしようかと考えていたのだそうだ。

昔の女声合唱が懐かしく耳に聞こえてくる。♪夏が来ーれば思い出す・・・♪は男でも歌えるくらいだ。(2020/9/29・かっぱ)


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