2.ピタゴラス音律・平均律・純正律
●ピタゴラス音律

基音を1つきめて、周波数が(3/2)倍になるようにピアノを調律します。基音をEbだとすると、Eb1−Bb1−F2−C3−G3−D4−A4−E5−B5−F#6−C#7−G#7となります。5度間隔の飛び飛びの音です。完全5度進行というわけです。
さて、上記の12音でピアノの鍵盤12鍵の音が決まったわけですから、あとはオクターブの調律でピアノが調律できます。
5度進行で引き続く7音を取り出してみます。例えばF、C、G、D、A、E、Bを取り出し、これを並べ替えると、C、D、E、F、G、A、Bとなり、ハ長調の7音階となります。
@ C長調の音階:C−D−E−G−A−B−C
A D長調の音階:D−E−F#−G−A−B−C#−D
B F長調の音階:F−G−A−Bb−C−D−E−F
C G長調の音階:G−A−B−C−D−E−F#−G
D A長調の音階:A−B−C#−D−E−F#−G#−A
E Bb長調の音階:Bb−C−D−Eb−F−G−A−Bb
は、協和性がすぐれた音程で聞こえて来ます。すべての音が12音の中に存在しているからです。
しかし、Eb長調の音階:Eb−F−G−Ab−Bb−C−D−Eb
でこのピアノを弾くと、Abが生成されていませんから、G#が代用品です。G#はAbより8分の1音高いのです。したがって、音痴の音階に聞こえます。EbとG#、これは気持が悪くなります。ドイツでは「狼音」と呼ばれます。きわめて不快な音程とされています。要するに「調子はずれ」になるのです。
●平均律
バッハの時代に鍵盤楽器のための新しい調律法が考案されました。ヴェルクマイスター法やキルンベルガー法などが使われました。部分的に5度の協和性、3度の協和性を重視することを組み合わせたやや複雑な調律法なのです。これらは、ピタゴラス音律を改善する調律法と考えればいいと思います。
後に、協和性を多少犠牲にするが、どんな調の曲でも弾けて転調にも強いことを一義的に考えた平均律が使われるようになりました。
平均律は1オクターブの12個の音の隣合う音の周波数比が、すべて等しくなるように調律するものです。どんなキーの音階を弾いても同じ周波数比になっていますから移調。転調をしても、狼音は起こりません。
平均律が一般的なものとなり、調律技術も「うなり」をカウントして正確に微妙な調律ができるようになったのは、つい19世紀から20世紀のことなのです。
じつは、ピタゴラス音律では半音の周波数比が場所によって等しくないのです。
弦楽器や一部の管楽器の演奏家は微妙な加減によって微妙な周波数の弾き分けが可能です。逆にいえば、このような楽器の音高には自由度があり、100回演奏して同じ音になることはないといわれます。
●純正律
アカペラのコーラスをやる人種が日常の話題にしている、協和性を重要視した音律に純正律というのがあります。みなさんは主3和音を知っているでしょう。
●トニカ:ド、ミ、ソ ●ドミナント:ソ、シ、レ ●サブドミナント:ファ、ラ、ド
これらの3つの重要な和音が完全に協和するように、周波数比を4:5:6に決めることが可能です。しかし、長音階和音は協和しても短音階和音は協和しないという欠点があります。長音階ハーモニーの「ソシレ」の「レ」を、短音階のハーモニー「レファラ」の「レ」は同じではありません。そのため「レファラ」を鳴らすと感度のよい人は耐えられないほどです。
純正律を信奉する音楽家も少なくありません。ベートーベンは純正律で調律されたピアノで作曲したと言われています。平均律のピアノで演奏してもベートーベンにならないと主張する人もいます。 |