第49回定期演奏会を聞いて
日高 好男(高校楽友会1期・楽友三田会14期)
去る3月21日(金)藤原洋記念ホール(日吉)で標記コンサートを聞いた。昨年の定演は、一昨年の定演が3.11の為に中止になったことをうけ、およそ2年分の曲目を一挙に演奏するという、大変なボリュームの演奏会であったが、それでも高校生達は素晴らしい感性で「完唱(?)」したものだった。そして今年も、昨年同様の盛り沢山なプログラムを堪能させてくれた。
慶應義塾塾歌

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先ず、3年生の亀谷祐輝君の指揮で、若々しい声が協生館に響き渡った。
§ 第一ステージ
(女声合唱)

2年生の佐藤七海さんの指揮で木下牧子作曲の「うたよ!」から「おんがく」、黒人霊歌より「When
I Lay My Burden Down」、それに信長貴富作曲「うたを うたう とき」より「春」の3曲が歌われた。小柄な佐藤さんがまとめ上げた女声合唱は高校生とは思えない大人っぽい発声で良くまとまっており、特に、黒人霊歌の英語の発音はとてもきれいに揃っていて、積み重ねてきた練習の成果が存分に発揮されたステージであった。
(男声合唱)

2年生の三枝惇君の指揮でTom
Gentry作曲「Sound Celebration」、信長貴富作曲で東日本大震災被災者の皆様へと銘打った<日本中に歌声を「歌おうNIPPON」プロジェクトより>「ワクワク」、そして最後が黒人霊歌の定番「Joshua
Fit The Battle of Jerico (ジェリコの戦い)」であった。 私は、指揮者の三枝君の圧倒的に優れたリズム感に曲の出だしから感心したが、特に最後の「ジェリコの戦い」では、自分達で考えたというMotion(動作)付きで、しかも照明の巧妙な効果もあって、素晴らしいステージとなったので感激した。三枝君の来年の定演での活躍が今から楽しみである。
§ 第二ステージ(混声合唱)

高校楽友会の定番のようになってきた「メドレー・宇宙戦艦ヤマト」(宮川泰作曲)、黒沢吉徳作曲「水の翼」より「走る川」、それに 岡坂慶紀作曲「明日への旅立ち」より「旅に出る」の3曲を、3年生の神部莉奈さんの指揮で演奏した。「宇宙戦艦ヤマト」は誰でも知っているポピュラーな曲であるが、4つある曲の中にある「序曲」と言うスキャットのような曲は、女声合唱らしい情緒をふんだんに発揮して、なお且つ一人一人がとても楽しんで歌っていたようで、心を打たれた。後の2曲は、比較的難曲であるにもかかわらず、厳しい練習の成果か、とても高校生とは思えない、大人っぽい歌い方でまとめあげていたことに感心した。
§ 第三ステージ(アカペラ+全体)
主に日吉祭などの文化祭で、団員が幾つかのグループに別れ、お互いに競演しあっているようであるが、今回は4つのグループがポップスを中心に、思い思いのカジュアルな服装で楽しい曲を披露してくれた。そして、最後に部員全員で歌ったABBAの「Thank
You For The Music」をステージ一杯に歌った。「歌う」ことの楽しさを聴衆の一人一人にまで届けてくれた、素晴らしい「若者の合唱」だった。確かに音取りとか、言葉だとか、素晴らしい合唱を演奏する為に求められるものは多くあるが、そんな技術的な事を飛び越えて、仲間と一つになってハモル原点のようなものを教えてくれた素晴らしいステージであった。
§ 第四ステージ(混声合唱)
最後は、恒例により今回の定演で卒団する3年生の胸にコサージをつけ、3年生の長谷部圭人君指揮による信長貴富作品の中から抜粋された4曲が演奏され、充実のステージとなった。組曲「新しい歌」より「新しい歌」と「詩人最後の歌」、五木寛之作詞「青春譜」そして最後が組曲「かなしみはあたらしい」より「未来へ」の4曲が演奏された。いずれの曲も、長谷部君のカリスマ性なのか、左手に持つ指揮棒から溢れ出る情熱の為なのか、多くの団員(特に男声諸君)が目を赤くし、泣きながら歌っていたのが印象的であった。卒団する3年生に下級生から花束の贈呈があった後、「青春讃歌」を全員で歌い、素晴らしい演奏会も幕となった。
まとめ
開演前から来ておられた岡田忠彦先生も、この日は大変体調がよろしかったようで、長丁場の演奏会を最後まで、ご夫妻共に目を細めて聞いておられたご様子がとても印象的であった。また、高校楽友会出身の亀井淳一君(高校楽友会16期・楽友三田会29期)のご子息・慶輔君が昨年4月から塾高楽友会に入団し、この日はご両親の見守る中、一生懸命歌っており「親子2代での高校楽友会」も嬉しかった。一方、大学楽友会・新学生指揮者の堀内絢斗と新幹事長・阿久津遼太の両君が昨年に引き続いて来聴し、高校楽友会と大学楽友会の更なる交流に前向きになってくれている事を知り、とても嬉しかった。
高校楽友会・部長の根垣俊宏先生は「私は専門家でもないし、何もしてあげていない。学生の自主性に任せきっている」と謙遜されたが、それでも好演奏を嬉しそうに見守る姿は真に頼もしい陰の立役者と感じられた。先生の永年に亘る部員との信頼関係が「塾」らしい、伸びのびとした音楽活動の下支えになっていると確信した次第である。
昨年も感じたことではあるが、永年ピアノ伴奏とボイス・トレーニングで、高校生達に「お母さん」と慕われ、お世話になっている小野木智子先生の存在感も実に大きいと思った。そのお陰で、プロの指揮者がいる訳でもないのに、大学生もOBG合唱団も顔負けの素晴らしい演奏会ができあがったのだろう。そこには「感動を伝える音楽」の原点があり、49年前に同じ高校生であった自分を重ねて見る思いに浸ることができた。正面に飾られた高校楽友会OBG有志からの立派な花篭に見送られながら、私は心豊かな思いで会場を後にした。

来年はいよいよ高校楽友会の定期演奏会も記念すべき第50回だ!日吉駅ではその話題に花が咲き、皆で「後輩達の為に、OBGとして何か喜ばれるプレゼントを」と約して家路についた。(3月21日)