追悼文集

佐野康夫さんを偲ぶ会

 

若山 邦紘(9期)


Yasuo Sano(1939-1997)

佐野康夫さん(7期)は7期のまとめ役だけでなく、前後の期の楽友会会員の名実ともにリーダーとして慕われ恐れられてきました。歴代の幹事長のなかでも、名幹事長として諸事を取り仕切ってきました。1年、2年の頃から、既に幹事長になることが決まっている珍しい人でした。それを自他共に認めていたのです。早いもので、今年は13回忌にあたります。佐野さんは若くして亡くなってしまったのです。

入院されていた三田の済生会中央病院に会いに行くのですが、お見舞いに行くのが辛くて仕方がありませんでした。その何年か前に、佐野さんの厳父、佐野俊臺氏が同じ病院に入院されていたのです。そして、そこで亡くなられたのです。

実際、佐野さんがいなくなったときは力が抜けました。佐野さんが居ない楽友会の集まりになんて出る気もしませんでした。

この度、佐野さんと同期の遠藤さん、長谷さん、野本さん、三戸さんが発起人となり、10月4日(日)に「佐野さんを偲ぶ会」が開催されました。ご遺族の豊子令夫人、ご長男の方俊さんを囲み、安永いく子、河北美代子、田畑沙世子、遠藤琢雄、野本陽一、三戸義昭、石崎允巳、長谷光男、栗原和夫(以上7期)、寺田 厚(5期)、土居範久(9期)の諸姉諸兄と私、わかやま(9期)が日吉の協生館内のレストランに集まり、在りし日の佐野さんの懐かしい思い出話に花を咲かせました。


琢ちゃん、オサヨ、クリちゃん、ミケ、へばり、イシ、れいこさん、よっちゃん、みっちゃん、おじい、ノモチン
かめさん、カッパ、まさとし君

なごやかな会食の後、時間の許す人たちで南麻布の光林寺へ墓参にまいりました。遠藤さんは北里病院に検診に行く日には、近くの佐野家の菩提寺である光林寺まで足を運びます。そして佐野さんの墓所にお参りし近況を報告してくるのです。1600年代からの古刹で春の桜もきれいですが、本堂内の中庭の大輪の牡丹の花も見事なものです。この春、遠藤さんがある月命日に佐野さんの奥様の豊子さんにばったりとお会いして、13回忌を機に「内輪で集まりをやりましょう」という話がもちあがっていたのです。

おそらくは、佐野さんが「俺を肴にしてみんなで久しぶりに集まったらどうだ?」と草葉の陰から遠藤さんに声をかけたのに違いありません。大学時代、武蔵小金井の田舎校舎に通っていた工学部の楽友たちは、三田や日吉の練習には通えません。したがって、役に立たない楽友会員だったのです。そのくせ、合宿を荒らすことと夜な夜な遊ぶことがあれば合流するといったお遊び専科でした。広尾の佐野家で宴会をやるといえば必ず顔を出すのです。四番町の拙宅でよくマージャン会もやりました。メンバーは変わりありません。

私にフォー・フレッシュメンのレコードを初めて聴かせたのは、栗原さん、野本さんの2人です。渋谷の恋文横丁にDuetというジャズ喫茶があったのです。高校生のときに聴かされてぶっ飛びました。その頃は鈴木光男(憶えていますか)も同じ狢の狸でした。

でかい顔をしながら唄わない楽友会員とは土居や私のことです。それにもかかわらず家族のように扱ってくれたのが佐野さんをはじめとする7期の人たちでした。夏休みは自宅にいるより、大磯の三戸家に大勢で居候をしているほうが長いくらいでした。そんなわけで、楽友会の演奏会や練習の思い出よりも、この世代の人たちとの長い付き合いが私達の楽友会生活そのものなのです。

13回忌?もう12年経ってしまったのかと、えっ!まだ12年しか経っていないの?という思いが交錯してなりません。あまりにも密度の濃い付き合いをしてきましたので、佐野さんのいないこの12年が30年にも思えてくるのでしょう。

あと何年後かは知りませんが、間違いなく全員が向こう側に揃います。さぞや賑やかなことになるでしょう。「ねぇ、佐野さん」(2009年10月7日/わかやま)

  


編集部注:この会を開くきっかけを作ってくれた遠藤琢ちゃんに、偲ぶ会の報告原稿を書いてもらおうと連絡をしました。「俺はカッパも知っているとおり、文章を書くことと集まりで挨拶することが大の苦手でなぁ、それで長谷に頼んだら、よし書こうといってくれたのだが、病後のリハビリ中で書こうとしたら『ストレスが強すぎる』という事なのさ。ゴメンナサイ」

そこで埼玉県議会の開催中だった野本さんに連絡をすると、「お前がすべて代弁してくれている。100%共感だ」といっています。そこで、編集ノート10月号で「こんな会がありました」と報告しようと思って書いた原稿を「追悼文集」のページに載せさせていただきました。

遠藤さんは、佐野さんのことを知らない世代の人たちに「彼のような立派な先輩がいたから、今の楽友会がある」ということを知っておいてほしいと願っています。同感ですねぇ。(わかやま10/21)