慶應義塾大学混声合唱団楽友会

定期演奏会レポート「コロナ禍だからこそ」


2021年度正学生指揮者 天野颯太(67期)



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第70回定期演奏会にご来場いただいた皆様、ありがとうございました。2021年度正学生指揮者の67期天野颯太です。

演奏会プログラムに一貫するテーマは「生命」でした。『風紋』では男女の愛というすべての生きるものに共通する生が、『幼年連祷』では感情の揺れ動きという人間らしい生が、そして『レクイエム』では死者と向き合うことで気付く尊い生が表現されています。
 

今回の演奏会の中で、私の感情が最も揺れ動いたステージは、第3ステージ『幼年連祷』です。『幼年連祷』の終曲『喪失』では「もう 泣けなくなってしまった」という詩が悲しみのメロディーに乗せて歌われ、そして「そのことがかなしくて いまは泣いてる」と続き作品が締めくくられます。

子どもは、大人にとっては些細なことで喜び、また悲しみます。しかし人間は年を重ねるたびに、喜びのハードルと悲しみのハードルの両方が上がってしまい、大人は単純なことでは喜んだり、悲しんだりできません。『喪失』では、そのことへの悲しみが歌われています。

感情のハードルが上がってしまうことは、一見残念なことのように感じますが、成長によって「深い喜びを知ることができるようになる」と考えることもできます。もちろん深い悲しみを知ることでもありますが。

『幼年連祷』作曲者・新実徳英の師匠である三善晃は、「破滅や絶望、失意などを胎生の糧としない愛を信ずることができない」と語っています。絶望を知っているからこそ、愛の尊さに気付くことができるのではないでしょうか。同じように、深い悲しみを知ることで、深い喜びを知ることができるのだと思います。

2021年度の活動は依然として新型コロナウイルスの影響を受け続けました。合宿や会食が禁止され、多くのコミュニケーションの場を失いました。しかし、繋がりを感じる場面が少なかったからこそ、仲間の大切さに気が付くことができました。また、合唱以外の繋がりを断たれたからこそ、定期演奏会での演奏を通じ、音楽の持つ魅力を深く実感することができました。この経験は、私たちの今後の人生における成長の礎になると確信しております。

最後になりましたが、定期演奏会にご来場いただいた皆様、演奏会開催にご協力いただいたすべての皆様に、この場をお借りして御礼申し上げます。(2022/1/27)

    


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