慶應義塾大学混声合唱団楽友会

定期演奏会レポート「合唱の歓びを全身で」


2024年度正学生指揮者 白井波音(70期)


第73回定期演奏会にご来場いただきました皆様,そして年間活動の遂行や演奏会開催に多大なるご支援を賜りました皆様に,現役生を代表して心より御礼申し上げます。

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今年は,「なぜ歌うのか」という漠然とした問いを掲げ,この問いに立ち返りながら定期演奏会へ向けて練習を積み重ねてまいりました。

キリストの誕生や聖母マリアを讃える信仰心が歌になる。強くて脆い愛や孤独を抱えた詩人への共鳴が音楽を生む。情感あふれる恋のメッセージに時代や国境を超えて新たな命が吹き込まれる。死者への穏やかな祈りと生者の希望がハーモニーに昇華される――。

私たちが出会う音楽の向こう側には,必ず言葉や想いが存在します。音楽家の自由かつ忠実な感性によって私たちのもとにもたらされた,かつての誰かの言葉や想い。それは,日常生活では触れることのなかったものであり,今ここで合唱をしているからこそ出会えたものです。そのため,私たちはその言葉や想いに真摯に向き合うことを大切にしてきました。こうした言葉や想いが合唱という形になった必然性に共感することが,私たちが歌う理由になるのだと思っています。

また,楽友会は音楽を楽しむ場であると同時に,大学生の集団でもあります。なぜ数あるサークルの中から楽友会を選び,定期演奏会という一瞬のために膨大な量の練習を重ねてきたのか。コロナ禍や活動停止,その後の傷跡に直面しながらも,なぜ私たちは歌うことをやめなかったのか。第73回定期演奏会は,ひとりひとりがこの問いに対する答えを模索し,その欠片を音楽として紡ぎ上げた場でもあったように思います。

本演奏会では,キリストの誕生の祝福で幕を開け,レクエイムで昇天する一貫性のあるプログラムをお届けしました。「大手拓次へのレクイエムである組曲を西村朗へのレクイエムとして歌う」,「アポリネールの詩に最も多くの曲をつけたプーランクは,フォーレの音楽の影響を受けている」などといった背景のもと,全ステージが有機的に繋がった非常に美しいプログラムでした。

本番では,これらの作品を1年間歌い続けてこられた幸せを噛みしめながら,自分たちで生み出す音に集中し,音楽を届けたいと願い,合唱の歓びを全身で感じていました。4年間に対する感慨は,アンコールになってから溢れ出し,演奏会はあっという間に終演を迎えました。楽友会での音楽に夢中になり,大きなステージに立った経験は,しなやかな自信と豊かな人生の種となって,私たちの心に残り続けるはずです。

次は後輩たちの番です。また新しい音楽との出会いが,彼らをさらに強く,優しく,そして面白くしてくれることでしょう。来年度以降も引き続き,現役生のご支援を賜りますようお願い申し上げます。ありがとうございました。

    


集部  臼井副幹事長からの「73回定期演奏会のレポート」原稿送付のメールです。

お世話になっております。楽友会71期 副幹事長の臼井 玄です。
先日の定期演奏会における正学生指揮者である70期の白井波音が、第73回定期演奏会のレポートを執筆いたしました。
お手数をおかけいたしますが、こちらのレポートをHPに掲載していただけますと幸いです。HPに掲載していただきたい白井の写真を添付しておきます。
 
ご連絡が遅くなりましたこと、心よりお詫び申し上げます。
何卒よろしくお願いいたします。
 
臼井 玄

(2025/1/21・編集部かっぱ)


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